壮年性脱毛症は、30~50代で発症する進行型の脱毛症で、男性型脱毛症やAGAとも呼ばれています。中年男性に多いイメージを持たれがちですが、20代の男性でも発症する可能性がある疾患です。年齢や性別に関係なく、シャンプーやヘアセットの際に抜け毛が増えてきたら発症している可能性があります。
今回の記事では、壮年性脱毛症の原因や特徴、日常生活で行える対策や治療方法について解説します。壮年性脱毛症を一日でも早く改善したいと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。 青山メディカルクリニック ■診療科:形成外科、美容外科、美容皮膚科 ■経歴 ■資格・所属学会
院長 松澤 宗範
URL:https://amclinic.tokyo/
2014年 近畿大学医学部 卒業
2014年 慶應義塾大学病院初期研修
2016年 慶應義塾大学病院形成外科入局
2016年 佐野厚生総合病院形成外科
2017年 横浜市立市民病院形成外科
2018年 埼玉医科総合医療センター形成外科・美容外科
2019年 銀座美容外科クリニック 新宿院院長
2020年 青山メディカルクリニック院長
・国際抗老化再生医療学会
・日本抗加齢医学会
・日本形成外科学会
・日本性機能学会
・日本アンチエイジング外科学会
・日本細胞外小胞学会
・日本がん免疫学会
・日本免疫治療学会
・日本NKT細胞標的治療研究会
・点滴療法研究会
・遅延型フードアレルギーと過敏症研究会
・日本コロイドヨード研究会
・日本医学脱毛学会
この記事でわかること!
壮年性脱毛症が発症する原因
壮年性脱毛症が発症する原因は個人によって異なりますが、主な原因は下記の3つです。
- 男性ホルモンの影響
- 生活習慣の乱れ
- 遺伝的な要因
それぞれの原因について詳しく解説します。自分の脱毛の原因がどれに当てはまるのか、ぜひ確認してみてください。
男性ホルモンの影響
発症には、男性ホルモンの一種である「DHT(ジヒドロテストステロン)」が関係しています。DHTは、数種類ある男性ホルモンのなかでもヘアサイクル(成長期・退行期・休止期)を乱すとされるホルモンです。
男性ホルモンDHT(ジヒドロテストステロン)が髪の成長を阻害して、抜けると再び生えにくくなってしまいます。毛が伸びる成長期の期間が短くなり、抜け落ちる休止期に多く毛包がとどまり毛が細く短くなり減少します。
ホルモンとヘアサイクルの乱れによって、髪が抜けやすく育ちにくくなるので症状に見合った治療が必要です。ホルモンバランスを整えるには、治療に加えて生活習慣の改善もすると効果が見えてくるでしょう。
生活習慣の乱れ
生活習慣の乱れも、壮年性脱毛症を引き起こす原因の一つです。過度な喫煙や飲酒、睡眠時間の乱れなどは、成長ホルモンに影響します。生活習慣の乱れが続くと、成長ホルモンがうまく働かずに脱毛を起こしやすくなります。
バランスのとれていない食生活も、症状を進行させてしまうのが特徴です。場合によっては、血行不良を引き起こして髪にしっかりと栄養が行きわたらなくなってしまいます。そのため、日々の食生活のバランスを整えるのは非常に大切です。
頭皮の健康のためにも、全体的な生活習慣を整えて成長ホルモンを促す必要があります。無理のない範囲で適度に運動をしたり、リラックスして過ごしたりするのも、脱毛症の改善には必要不可欠です。
遺伝的な要因
遺伝的な要因によって、壮年性脱毛症にかかる方もいます。父親や祖父にも同じような症状があった方の場合は、脱毛症の遺伝子を引き継いでいる可能性もあります。しかし、すべての脱毛症の方に遺伝子があるとは限りません。
常染色体の17q21や20p11やX染色体上の男性ホルモンレセプター遺伝子の多型などが、遺伝型の脱毛症の要因とされています。また、体内にある酵素「5αリダクターゼ」を持つ方も遺伝子を引き継ぐ可能性も考えられます。
遺伝による脱毛症の方に特化した治療法はないため、薬物治療や自毛植毛によって治療をメインに進めているのが現状です。遺伝的な要因だったとしても、生活習慣にも注意しつつAGA治療を続ける姿勢が大切です。
壮年性脱毛症を防ぐ5つの対策
壮年性脱毛症を予防するには、次の5つのような対策があります。
それぞれの対策について解説します。日常生活で脱毛の予防や改善をしていくために、ぜひ確認してみてください。
生活習慣の改善
生活習慣の乱れによって、髪が抜け落ちやすくなる可能性があります。普段から飲酒・喫煙の習慣があると、脱毛症の原因になりかねません。特にお酒に含まれるアルコールは、髪に必要な亜鉛を大量に消費して頭皮の健康を害する成分です。
また、睡眠不足も脱毛症を引き起こす原因になります。日々の睡眠が足りていないと、代謝を低下させて頭皮の血行不良になる場合もあります。過度な飲酒・喫煙を控えて、規則正しい生活を送ることが大切です。
今までの生活を、今すぐにすべて変える必要はありません。早寝早起きを心がけたり、飲酒や喫煙の量を少しでも減らしたりと、脱毛症の改善のためにやれる行動から少しずつ始めてみましょう。
バランスの良い食事をとる
髪を育てるには、バランスのとれた食生活も必要不可欠です。髪を生やすために必要とされる栄養素は、亜鉛やタンパク質などさまざまな種類があります。髪と頭皮の健康によい栄養を効率的に働かせるために、ビタミンやミネラルの同時摂取も大切です。
毎日偏った食生活をしていると栄養が欠乏して頭皮の育毛環境が悪くなり、新しい髪が生えにくくなります。育毛を促進するためには、偏りのない食生活を心がけて頭皮を健康にすることが重要です。
ストレスを適度に発散
ストレスがかかりすぎると、自律神経を乱す原因になります。自律神経の乱れによって血流が悪化すると、育毛に影響を及ぼす恐れもあるため注意が必要です。自律神経を整えるためには、自分に合ったストレスの打開法を見つけて実践したり、適度な運動をしたりすることが大切です。
頭皮マッサージも、頭皮の血流促進に効果が期待できます。仕事や勉強中に軽く頭皮マッサージをすると、集中力が高まりやすくなる点もメリットです。時間を見つけて頭皮をもみほぐせば、リラックス効果も見込めます。
人間はリラックスしている状態にあると、副交感神経が優位になるとされています。副交感神経を優位にさせるための主な方法は、有酸素運動や腹式呼吸などです。頭皮の健康を保つために、適度にストレスを発散させて副交感神経を働かせましょう。
市販の発毛剤や育毛剤を活用
市販の発毛剤や育毛剤も、脱毛症の予防に活用できます。発毛剤に含まれる「ミノキシジル」は発毛を促す成分です。発毛剤を適切に使用すれば、壮年性脱毛症の改善に効果が期待できます。ただし、市販の発毛剤にはミノキシジルの濃度が低い製品もあるので、即効性は見込めません。
育毛剤は、大きく分けて「化粧品」と「医薬部外品」に分類されます。しかし、どちらの育毛剤でも発毛は促せないので注意が必要です。髪を生やす目的でなく、頭皮環境を健やかにして抜け毛を防止したい方には育毛剤が向いています。
ただし、育毛剤も発毛剤も副作用がある点がデメリットです。頭皮のかぶれやかゆみ、赤みや発疹が見られる場合があります。副作用に対して不安があれば、医療関係者に相談するのがよいでしょう。
病院やクリニックを受診
脱毛の悩みがなかなか改善しない場合は、病院やクリニックを受診しましょう。自分自身では、脱毛の原因は分かりにくいものです。専門医のいるクリニックを受診して、壮年性脱毛症の本質的な原因を知って治療に取り組めば改善が見込めます。
現在は、薄毛治療がメインのクリニックも全国各地に複数箇所あります。専門クリニックでは、内服薬や注射を用いた脱毛症の治療を取り扱ってます。気になる方は、まずは診察を受けて治療方法や費用などについてうかがうとよいでしょう。
壮年性脱毛症の治療方法
壮年性脱毛症の治療方法について解説します。クリニックに行く前に、ぜひ確認してください。
自由診療治療につきましては健康保険などの公的医療保険が全く使えないため、治療費が高くなります。
また一部の自由診療については医療費控除の対象となる診療もございますがAGA治療においては容姿を美化し、容ぼうを変えるなどの目的要素が強いため医療費控除の対象外になります。
飲み薬・塗り薬の「投薬治療」
主にクリニックで取り入れられている方法は投薬治療です。多くのクリニックでは、内服薬にはフィナステリドやミノキシジル、外用薬(塗り薬)にはミノキシジルを用いて治療します。
投薬治療に用いられる薬は、主に発毛を促す薬と薄毛の進行を遅らせる薬です。脱毛の症状によっては、両者の薬を併用する場合もあります。投薬治療は、副反応の有無やそれぞれの薬の効果の出方などをよく見ながら進めていきます。
薬によって副反応が出る場合は、速やかに医師に相談しましょう。自己判断せず、投薬治療の中止や薬の変更など、医師の判断をあおぐのが賢明です。
髪の毛の成長を促す薬を注射する「注入薬」
メソセラピーは、レーザーや皮下注射によって髪の成長を促す治療方法です。有用成分を配合した薬を、注射器で直接頭皮に注入します。クリニックによっては針を使わない、痛くない注入治療を提供しているところもあります。
メソセラピーは、ほかの治療法と比較すると副反応のリスクは少ないとされています。しかし、術後の患部に赤みやかゆみなどが出やすい点がデメリットです。アレルギー症状や感染症、血圧低下が起こる可能性もあります。
自分の髪の毛を移植する「自毛植毛」
自毛植毛は、名前の通り自分自身の後頭部からの髪の毛を脱毛部分に移す方法です。自分の毛を使うので、定着しやすい治療方法といわれています。また、人工植毛と比べると副反応は出にくいのも特徴です。
また移植された毛はDHTの影響を受けにくいため、長期間持続的に成長しますが、費用が高額になりやすいため、医師に相談しつつ慎重に検討することが必要です。
【治療の副作用・リスク】個人差や体質により、下記事項が発生する可能性もありますのでご注意ください。
主な副作用 | フィナステリド(プロペシア錠) | デュタステリド(ザガーロ) | ミノキシジル(内服薬) | ミノキシジル(外用薬) | メソセラピー | 植毛 |
リビドー減退 | 〇 | 〇 | ||||
勃起不全(ED)・射精障害・精液量減少 | 〇 | 〇 | ||||
血管浮腫 | 〇 | 〇 | ||||
立ちくらみ・めまい | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
血圧低下 | 〇 | 〇 | ||||
抑うつ | 〇 | 〇 | ||||
肝機能障害 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
アレルギー反応(発疹・痒み) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
多毛症 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
動悸 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
むくみ | 〇 | |||||
初期脱毛 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
頭皮のかゆみ、かぶれ、赤み、炎症など | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
吐き気、食欲不振、腹痛、下痢 | 〇 | 〇 | 〇 | |||
傷跡・ショックロス | 〇 | |||||
味覚異常 | 〇 | 〇 | ||||
頭痛・フケ | 〇 |
壮年性脱毛症のよくある質問
壮年性脱毛症に関するよくある質問を紹介します。参考にしてみてください。
壮年性脱毛症は何科を受診すればいいか?
壮年性脱毛症は脱毛症の一つですので、皮膚科、美容皮膚科、AGA専門クリニックを受診すると良いでしょう。皮膚科や美容皮膚科では主に内服薬や外用薬による治療が行われます。
もし薄毛が進行している場合は、注入治療や植毛など幅広い治療に対応できるAGAクリニックをおすすめします。近隣に薄毛治療のクリニックがなくても、オンラインにて診療を行うサービスも利用できます。
壮年性脱毛症は自然に治るのか?
ヘアサイクルの乱れが生活習慣によって起こっている場合、生活習慣の改善によって薄毛の進行を抑制することは期待できます。またシャンプーなどヘアケアを見直すことで頭皮環境を整えることもできるでしょう。
しかし壮年性脱毛症は、抜け毛が徐々に進行していくためセルフケアだけで「発毛」または「完治」を期待することは難しいと言えます。
壮年性脱毛症かも?と思ったらクリニックに相談を
日常的なセルフケアも大切ですが、それだけでは根本的な脱毛症の治療には至りません。そのため、専門医から問診や触診を受けて原因を知り、脱毛症の治療を進める必要があります。薄毛に悩む女性の方も、クリニックを受診すると改善が見込めます。周囲には話しにくい悩みでも、専門の医師に相談が可能です。
壮年性脱毛症は、加齢とともに進行するケースが多いのが特徴です。脱毛に対して心当たりがある場合は、早めにクリニックを受診して治療を受ければ症状の改善が期待できます。

育毛治療は時間がかかるプロセスであり、続けることが大切です。また、バランスの取れた食事を摂り、十分な睡眠をとり、ストレスを軽減することが大切です。薄毛が気になり出したら早めにクリニックで医師の診察を受けることをお勧めします。
まとめ
AGAの治療にはさまざまな方法があり、一人ひとりに合った治療法を進めていけば症状改善が期待できます。改善のためには、脱毛の症状が進み過ぎないうちにクリニックに行って早めに治療を受けることが大切です。
ただし、投薬治療や植毛に頼るだけでは壮年性脱毛症の症状は早めに治りません。日頃の生活でも、ストレスを発散したり食生活に気を付けたりと頭皮の健康を意識して過ごしましょう。

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