薄毛や抜け毛の悩みをもつ男性の中には、これ以上脱毛が進まないように薬を服用したいと考えている方も多いでしょう。
フィナステリドを主成分とするAGA治療薬について詳しく知りたい方に向けて、この記事では、各フィナステリド製剤の種類や薄毛の進行を防ぐメカニズムを解説します。服用前に知っておきたい副作用や注意事項もまとめました。
薄毛を早い段階で治療したい方・飲み薬を服用しようか迷っている方は、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
この記事でわかること!
フィナステリドとは?
フィナステリドは、AGA治療薬に配合されている有用成分の名前です。
男性型脱毛症AGAに使われるフィナステリドの入った内服薬は、薄毛の原因物質ジヒドロテストステロンが作られるのを防ぎ、薄毛が進むのを食い止める薬です。
日本では、最初に発売された先発医薬品プロペシアにつづき、たくさんの後発医薬品も販売され、多くの男性の薄毛治療に活用されています。
製品名として使用されることも
有用成分の名前であるフィナステリドは製品名に使われる場合があります。「フィナステリド錠」と、後発医薬品の製品名としても用いられています。
先発医薬品の特許期間が終わると、多くのメーカーから後発医薬品が発売されるケースがあります。
そのため、現場で取り間違いなどを防ぐ目的で、後発医薬品の製品名には独自に考えた名前をつけず成分名や会社名をそのままつける決まりができました。
フィナステリドの先発医薬品であるプロペシアの後発医薬品は、フィナステリド錠1mg「サワイ」とフィナステリド錠1mg「トーワ」などがあります。
このように製品名に「フィナステリド錠」と記載されていたら、後発医薬品と判断してください。
フィナステリドを含むAGA治療薬
AGA治療に活用されているフィナステリド製剤は、主にプロペシアとフィンペシアです。なお、国内では多くのメーカーがプロペシアの後発医薬品を販売しています。ここでは、各フィナステリド製剤の概要をお伝えします。
先発医薬品「プロペシア」
プロペシアはフィナステリドを含むAGAの薬として発売されている先発医薬品の名前です。
1990年代よりアメリカにてAGAの症状を和らげる際に用いられ、日本では2005年に承認されました。
60ヵ国以上で流通し、国内でも長い間多くの症例に活用されつづけているため、豊富な使用実績をもつのが特徴です。プロペシアは、フィナステリドを含むAGAの薬として承認を受けています。日本人が服用した臨床データをもとに開発し製品化されています。
国内の承認がない「フィンペシア」
フィンペシアはインドのシラグ社が製造販売している、フィナステリドを含むAGAの薬です。フィンペシアは、まだ日本国内で承認を受けていないため、日本のクリニックではフィンペシアを処方できません。
フィンペシアは価格が安いため、個人輸入を検討する方もいるかもしれません。しかし、個人輸入で入手した薬は万が一健康被害が生じた場合、公的な救済措置を受けられません。
リスクを考慮すると、個人輸入したフィンペシアの服用は避けた方がよいといえるでしょう。
その他のフィナステリドを含むジェネリック医薬品
プロペシアの特許が切れた2015年以降、10社以上のメーカーから次々と後発医薬品(ジェネリック医薬品)が発売されはじめました。後発医薬品は、研究開発費を抑えて製造できるため、先発医薬品と同じ効果を発揮できるにもかかわらず価格が安い点が特徴です。できるだけコストをかけずに服用したい場合は、ジェネリック医薬品を処方してもらうとよいでしょう。
代表的なジェネリック医薬品は、フィナステリド錠1mg「サワイ」、フィナステリド錠1mg「トーワ」、フィナステリド錠 1mg「FTI」などがあります。
フィナステリドのAGA治療効果は?
ここからは、AGAの飲み薬であるフィナステリドの効果について解説していきます。
薄毛の進行を抑制
フィナステリドは、AGAの原因のひとつであるジヒドロテストステロン(DHT)が過剰に作られるのを防ぎ、薄毛がさらに進まないように働く成分です。
髪の毛を成長させる毛母細胞にDHTが入り込むと、毛母細胞の増殖が抑えられて軟毛化につながります。血中に入って毛根にたどり着いたフィナステリドは、男性ホルモンであるテストステロンからDHTを作りだすのを助ける「5α-リダクターゼ」の働きをブロックします。その結果、髪の毛が作られる組織でDHTが過剰に作られなくなり、さらなる軟毛化が防げるのです。
ヘアサイクルを正常にする
フィナステリドの服用をつづけると、乱れたヘアサイクルも正常に戻ってきます。
薄毛の方の頭皮では、DHTの過剰な働きで毛母細胞の増殖が抑えられ、ヘアサイクルの成長期が短くなっています。成長期が短くなると、強い髪の毛は育ちません。
フィナステリドを服用してDHTが過剰に作られなくなると、毛母細胞の働きが再び活性化され、髪の毛の成長期が元どおりの長さになるでしょう。
フィナステリドと他のAGA治療薬の違い
デュタステリドやミノキシジルもAGAの治療薬として使われる成分です。それぞれ効果を発揮するメカニズムが異なり、AGAの進行度合い・年齢・体質などに応じて選べます。ここでは、各成分の作用メカニズムや効果を詳しく解説します。
以下、順番に見ていきましょう。
フィナステリド|進行を遅らせる
フィナステリドは、DHTが過剰に作られるのを防いでヘアサイクルを改善し、抜け毛がさらに進まないように働きかけます。悪玉テストステロンとも呼ばれるDHTは、テストステロンから「5αリダクターゼ」の助けを借りて作られます。フィナステリドは、5αリダクターゼの働きをブロックして、DHTが過剰に発生しないようにする成分です。
なお、5αリダクターゼにはⅠ型とⅡ型があり、フィナステリドがブロックするのは、前頭部から頭頂部の毛包で働くⅡ型のみです。
フィナステリドは、20年以上前からAGA治療に使われています。豊富な臨床実績をもとに、医師が使用感を熟知しているのがメリットです。
デュタステリド|抜け毛を予防する
デュタステリドも、フィナステリドと同じくDHTが過剰に作られるのを防ぎ、抜け毛を予防します。フィナステリドとの違いは、ブロックする5αリダクターゼのタイプです。
フィナステリドはⅡ型の働きのみを抑えます。一方デュタステリドは、Ⅱ型だけでなく、皮脂腺で働いて抜け毛を起こすⅠ型の働きも阻害します。違いを以下の表にまとめました。
成分 | フィナステリド | デュタステリド |
ブロックする5αリダクターゼのタイプ | Ⅱ型のみ | Ⅰ型・Ⅱ型の両方 |
ブロックする5αリダクターゼが分布する場所 | 前頭部・頭頂部の毛包 | ・前頭部・頭頂部の毛包 ・全身の皮脂腺 |
デュタステリドはフィナステリドに比べてDHTの抑制効果が期待できるため、以下のような方が服用すると効果を体感しやすいと考えらえます。
- フィナステリドを服用しても効果が不十分だった方
- AGAの進行スピードが早い方
抜け毛の状態や体質も考慮しながら、医師と相談して薬を選ぶとよいでしょう。
ミノキシジル|発毛を促す
ミノキシジルは、リアップなどの発毛剤に含まれる有用成分です。毛包を直接活性化したり、血管を拡張して血流を良くすることで発毛を促す効果があります。
ミノキシジルは、新たな髪の毛が生えてくるよう毛包へ積極的に働きかけるのが特徴です。つまり、フィナステリドやデュタステリドとは違うメカニズムで効果を示します。そのため、場合によっては内服薬と併用すると相乗的な効果を期待できるのです。
また、ミノキシジルには外用薬と内服薬があります。日本皮膚科学会のガイドラインにて使用を推奨されているのは、外用薬です。なお、ミノキシジルの内服薬は承認を受けていません。安全性を担保できないため、医師の指導下で服用する場合も、細心の注意が必要です。
フィナステリドの副作用
フィナステリドは、長期間服用をつづける薬です。服用して時間が経ってからでも、副作用のような異変を感じた場合は無理せず医師に相談してください。
どんな薬にも副作用があるように、フィナステリドにも副作用があります。フィナステリドを服用して起こり得る副作用は主に4つありますので、それぞれについて解説します。
初期脱毛
フィナステリドを服用し始めて約2週間~1ヵ月程度経つと、一時的に抜け毛が増える“初期脱毛”が起こる場合があります。フィナステリドで起こる初期脱毛とは、フィナステリドの働きによって新しく成長し始めた毛が、もともと生えていた古い毛を押し出して起こる脱毛です。
脱毛が進んでしまうように感じますが、フィナステリドによってヘアサイクルが正常に戻り始めているサインでもあるため、過度に心配する必要はありません。個人差はありますが、多くの場合1〜2ヵ月程度でおさまります。とはいえ、脱毛が想定外に長引いたり、脱毛量が多くて不安だったりする場合は、無理せず医師に相談してください。
性機能障害
プロペシアの臨床試験結果によると、性欲減退が1.1%(3/276例)、勃起不全が0.7%(2/276例)に見られています。発現頻度は稀ですが、子どもを希望する方にとっては不安な副作用でしょう。
男性機能が低下すると、パートナーの妊娠に時間がかかる可能性があります。万が一副作用が出たらいったん服用をやめるか、妊娠が分かってから服用し始めるかなど、医師と相談して治療方針を決めてください。
肝機能障害
フィナステリドは主に肝臓で代謝されるため、肝臓にダメージを与える可能性があります。これは、肝臓で代謝を受ける薬全般で注意すべき副作用です。万が一、疲労感・吐き気・食欲不振などを自覚した場合は、医師に相談してください。
肝機能障害の有無は、血液検査値でチェックできます。心配のある方は、定期的に血液検査を受けることをおすすめします。なお肝疾患をお持ちの方は、フィナステリドを服用してもよいか事前に医師へ確認してください。
うつ
フィナステリドを服用すると、うつの症状が出る可能性があります。フィナステリドは男性ホルモンのバランスを変化させる薬です。男性ホルモンは勝気やチャレンジ精神にも関わっているため、フィナステリドによってホルモンバランスが乱れるとやる気が出なかったり気分が低下したりするケースがあります。万が一うつのような症状を感じた場合は、医師に相談してください。 【治療の副作用・リスク】個人差や体質により、下記事項が発生する可能性もありますのでご注意ください。
主な副作用
フィナステリド(プロペシア錠)
デュタステリド(ザガーロ)
ミノキシジル(内服薬)
ミノキシジル(外用薬)
メソセラピー
植毛
リビドー減退
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勃起不全(ED)・射精障害・精液量減少
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〇
血管浮腫
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〇
立ちくらみ・めまい
〇
〇
〇
〇
血圧低下
〇
〇
抑うつ
〇
〇
肝機能障害
〇
〇
〇
〇
アレルギー反応(発疹・痒み)
〇
〇
〇
〇
〇
多毛症
〇
〇
〇
〇
動悸
〇
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〇
むくみ
〇
初期脱毛
〇
〇
〇
〇
〇
頭皮のかゆみ、かぶれ、赤み、炎症など
〇
〇
〇
〇
吐き気、食欲不振、腹痛、下痢
〇
〇
〇
傷跡・ショックロス
〇
味覚異常
〇
〇
頭痛・フケ
〇
フィナステリドの注意点
フィナステリドをリスクを抑えつつ服用するために、いくつか注意点があります。
個人輸入品は危険
インターネット上で、フィナステリドをはじめとするAGA治療薬を購入できるサイトを見かけた経験のある方も多いでしょう。AGA治療薬は、輸入代行業者によって通販サイトで販売されているケースがあります。しかし、このような輸入品の中には、偽造品が混入している可能性があるとして近年問題視されています。
偽造医薬品は、日本で有効性や安全性を確認していないだけでなく、どのような環境で製造されたかも不明で、有害物質を含む可能性すら考えられます。健康被害につながりかねないため、ご注意ください。
なお、薬を服用して健康被害が出た場合、通常は救済を図る公的制度を利用できますが、個人輸入の薬による健康被害は救済対象となりません。フィナステリドの服用を希望する方は、医療機関を受診して医師に処方してもらいましょう。
対象者は成人男性だけ
フィナステリドを服用できるのは、20歳以上の男性だけです。
フィナステリドは、未成年の発育に悪い影響を与える可能性があります。なぜなら、フィナステリドが抑制するDHTは、思春期の声変わりなどの成長に必要なホルモンであるためです。20歳未満での臨床試験も実施していないため、未成年は服用できません。
また、女性はフィナステリドを服用できません。女性では男性とは別のメカニズムで脱毛が進行すると考えられるためです。実際、女性でのフィナステリドの効果を調べた海外の試験では、女性の脱毛症にフィナステリドは効果がなかったと報告されています。
特に注意が必要なのは、妊娠中または妊娠している可能性のある女性です。DHTは男性胎児の生殖器の発育に必要なホルモンです。そのため、妊娠している方がフィナステリドを服用すると、男子胎児の発育に悪い影響が出るおそれがあります。
このような理由から、未成年・女性はフィナステリドを服用しないよう注意してください。
服用中は献血NG
フィナステリドを服用中の方は、献血できません。フィナステリドを含む血液を妊娠している方や未成年へ輸血した場合、胎児の発育や未成年の成長へ悪影響が出るおそれがあるためです。
フィナステリドは体内に約1ヵ月います。そのため献血するには服用をやめて1ヵ月間待つ必要があります。服用中だけでなく、服用をやめて1ヵ月間も誤って献血しないよう注意してください。
フィナステリドに関するよくある質問
ここでは、フィナステリドに関するよくある質問をピックアップして回答します。
AGA治療は月いくらかかる?
AGA治療でフィナステリドの服用を選んだ場合の、料金相場をお伝えします。AGA専門クリニックの料金を参考にまとめた1ヵ月の薬代の相場は、以下のとおりです。
内服薬 | 1ヵ月の料金 |
プロペシア(先発医薬品) | 7,000円~10,000円程度 |
フィナステリド(後発医薬品) | 3,000円~9,000円程度 |
クリニックによっては、初回と2回目以降で1ヵ月の料金が異なったり、6ヵ月分・12ヵ月分をまとめて購入すると割安になったりと、料金体系はそれぞれ違います。他の治療と組み合わせるプラン料金もあるため、詳しくは各クリニックHPをご覧ください。
フィナステリドの効果はいつから現れる?
フィナステリドを1日1回飲みつづけると、3~6ヵ月程度で効果が現れはじめます。早くて3ヵ月で効果が出る方もいますが、通常は6ヵ月服用して効果を判定します。そのため飲み始めの時期に服用をやめてしまわず、6ヵ月程度は服用を継続してください。
育毛治療は時間がかかるプロセスであり、続けることが大切です。薄毛が気になり出したら自己判断で色々なお薬を試すよりも早めにクリニックで医師の診察を受けることをお勧めします。
フィナステリドはやめたらどうなる?
AGAは進行し続ける疾患であり、フィナステリドの服用をいったんやめると、発揮されていたフィナステリドの効果がなくなり、徐々に脱毛が進みだすと想定されます。
フィナステリドの効果をキープするには、フィナステリドを服用しつづける必要があります。
とはいえ、薄毛治療で目指すゴールは個々で異なります。退職したり、周りに薄毛の方が増えてきたりすると、薄毛への意識も変わるかもしれません。
また、年齢を重ねるとテストステロンの分泌量は徐々に減っていくため、服薬しつづける必要がなくなるケースも考えられます。ご自身のライフステージや体の変化に合わせて、治療方針も見直していくとよいでしょう。
まとめ
フィナステリドは、AGAの原因物質であるジヒドロテストステロンの生成を抑えて、薄毛が進むのを食い止める薬です。日本では、先発医薬品プロペシアと複数の後発医薬品フィナステリド錠が承認されています。
個人輸入できる安価な薬もインターネットにて入手できますが、健康被害が起こるおそれがあるため注意してください。
起こり得る副作用も事前にチェックしておきましょう。副作用の症状を自覚した場合は、無理せず医師に相談してください。
AGAの進行度やフィナステリドの効き具合によっては、ミノキシジル外用薬との併用や、デュタステリドへの切り替えで効果を期待できる場合もあります。フィナステリドの服用を検討している方は、AGA専門クリニックを受診して、目的や希望に合わせた治療方針を相談しましょう。
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