牽引性脱毛症(けんいんせいだつもうしょう)とは、日頃から長い髪を結んだり左右に分け目をつけたりすると生じやすくなります。髪の重さで毛根に負担がかかり、抜けやすくなります。血行不良が生じて、髪の成長が妨げられてしまいます。
髪を結ぶ機会の多い女性に見られやすい症状ですが、実は性別や年齢は関係なく、髪を結ぶ習慣があったりロングヘアで分け目をつけたりしていると発症する可能性があります。放置すると進行はしませんが、抜け毛は減らせません。
今回の記事では、牽引性脱毛症の特徴や改善方法、よくある質問の回答について解説します。牽引性脱毛症の悩みを抱えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
この記事でわかること!
牽引性脱毛症は髪を強く引っ張り続けて毛が抜ける症状
牽引性脱毛症は、髪を強く引っ張り続けた影響により部分的に起こる脱毛症です。進行性の病気ではなく、髪を結ったり同じ分け目にしたりすると起こりやすくなります。1日のみではなく、毎日のようにポニーテールや三つ編みなどのヘアスタイルにしていると発症するのが特徴です。
血行不良によって髪に栄養が届きにくくなる点が主な特徴です。そのため、脱毛部分に再度髪の毛が生える確率も低くなります。髪の長い女性に発症しやすいイメージはありますが、男性でも長い髪の方であれば発症する可能性があるので注意が必要です。
予防策は、できるだけ頭皮に負担のかかりすぎない髪型にすることがあげられます。脱毛に不安があれば、専門家に相談するのもよいでしょう。
牽引性脱毛症になりやすいヘアスタイル
牽引性脱毛症になりやすいとされる髪型は、主に下記の5つです。
それぞれの髪型の特徴や牽引性脱毛症を起こす理由について解説します。自分に当てはまる特徴がないか確認してみましょう。
後ろに一本で結ぶ
長い髪をヘアゴムで後ろに一本で縛るヘアスタイルは、髪の毛が引っ張られる形になり、結んだ部分が頭皮を後方に引っ張るため、髪の抜け落ちを起こしやすくするのが特徴です。
毎日のように強く結ぶ髪型にしていると、若い世代でも頭皮の血行不良になり、抜け毛が増える恐れがあります。髪に栄養が行きわたりにくくなる可能性もあり、注意が必要です。男性でも、長い髪の毛をしばって生活する習慣がある方は脱毛症にかかる可能性があります。
オールバック
オールバックの髪型は、髪の毛を後ろに強く引っ張ってセットするスタイルです。このスタイルでは、髪の根元が引っ張られることになるため、特に長時間このスタイルを続けると、牽引性脱毛症のリスクが高まることがあります。
オールバックのスタイルはそのままでは牽引性脱毛症を引き起こすわけではありませんが、頻繁に強い力で髪を引っ張ると、毛根に負担をかけて脱毛のリスクが高まります。頭皮ケアをしながら、髪の根元に休息を与えることが重要です。
カチューシャ
前髪が邪魔で、カチューシャを日常的に使っている場合は要注意です。カチューシャが頭に密着していると、髪を無理に引っ張ったり、圧迫したりすることになります。特にきついカチューシャや長時間の使用が続くと、髪の根元にストレスがかかり、毛根がダメージを受けやすくなります。
長時間または強く引っ張るような使い方をすると、髪の毛や毛根に負担をかけ、牽引性脱毛症を引き起こす可能性があります。
カチューシャを使う代わりに、髪型を変えることで頭皮への負担を分散させることで、脱毛のリスクを減らすことができます。
ドレッドヘア・編み込み
ドレッドヘヤや編み込みは、より強めに髪を結いながらセットする必要があるため、髪が抜ける可能性が高いヘアスタイルといえます。
編み込みは、より強い力でセットしないときれいにまとまりません。そのため、ほかのヘアスタイルよりも頭皮を引っ張る力が強く、脱毛症になる可能性が高まります。毎日編み込みをせずに、ときには髪を休ませて頭皮への負担を減らすことが大切です。
エクステをつける
エクステは、髪を長く見せるためにつける人工の髪です。髪を長く見せたり、普段の髪よりもボリュームがあるように見せたりします。しかし、長い髪を自毛に装着するため、重力がかかり、頭皮や地毛に負担となってしまう点も特徴です。
脱毛症の対策として、できるだけ軽めのエクステを使ったり、使う頻度を減らしたりする必要があります。着ける前に行うブラッシングでも、無理やり髪を強く引っ張らないように注意しましょう。
抜け毛の毛根で牽引性脱毛症をチェック!
自身の髪が牽引性脱毛症かどうかをチェックするための項目は、下記の2通りです。
- ひげのような毛がついている
- 半透明から白の毛根鞘がついているか
この章では、それぞれの項目について解説をします。鏡で自身の髪を見ながら、当てはまる項目がないか確認してみてください。
ひげのような毛がついているか
ひげのような太い毛がついていると、牽引性脱毛症の恐れがあります。ヘアアレンジで髪が強く引っ張られて、毛球が変化した可能性が見られるからです。ひげのような毛がついた状態を「ひげ根状態」といいます。
ひげ根状態が見られるのは、毛根が頭皮にうまく根付いていないためです。新たに髪の毛が生えてきたとしても、またすぐに抜け落ちる可能性が高くなっています。髪が抜ける頻度が高くなり、髪に栄養が行きわたりにくくなるため注意が必要です。
半透明から白の毛根鞘がついているか
抜けた毛に半透明から白の毛根鞘(もうこんしょう)がついていると、牽引性脱毛症の可能性があります。この毛根鞘は「毛包」といわれる組織で、自然な抜け毛ではあまり抜け落ちが見られません。髪が強く引っ張られ続けると、髪と一緒にくっついて抜けて落ちてしまいます。
抜けた毛にひげ根状態と毛包の両方が見られた場合は、脱毛症にかかっている可能性が考えられます。それに加えて、近頃髪のボリュームが少ないと感じたら、薄毛治療ができるクリニックで髪の状態を診てもらうとよいでしょう。
【牽引性脱毛症】4つの改善方法
牽引性脱毛症は、ヘアケアの方法や生活習慣を変えれば改善していきます。主な改善方法は下記の通りです。
いつもの髪型をやめる
毎日のようにエクステをつけたり編み込みをしていると、髪を引っ張る力によって脱毛のリスクが高くなります。脱毛の対策として、同じ髪型ではなくヘアスタイルを変えながら頭皮の負担を分散するのが大切です。
いつも三つ編みやポニーテールをしている方は、髪をおろす時間を多めにすると脱毛症の予防になります。家のなかでは髪をほどいて、しっかりとヘアケアするとよいでしょう。
ヘアアレンジをしたい場合は、髪の分け目を変えたりまとめる高さを変えたりするのも脱毛の対策につながります。髪のスタイルを楽しみながら脱毛を予防する方法もありますので、無理やりあきらめる必要はありません。
頭皮をほぐすマッサージをする
頭皮のマッサージは血流改善の効果が期待できます。しかし、強く刺激しすぎるとかえって頭皮の負担になるので、軽くほぐすようなイメージで行うのが大切です。バスタイムや就寝前など、リラックスしている時間帯に行うとよいでしょう。
自分の手でも頭皮マッサージはできますが、市販のヘッドケア用品でも頭皮トリートメントを行えます。ケア用品の使用で頭皮の血流が改善され、髪に栄養が届きやすくなる効果が見込めます。
自分のやりやすい方法で、簡単に頭皮マッサージをして牽引性脱毛症を予防していきましょう。
ショートカットにする
ショートカットにすれば、ヘアブラシやアイロンで髪を強く引っ張る必要はありません。頭皮や髪への負担が減り、牽引性脱毛症のリスクも小さくできます。シャンプーでも頭皮や髪を強く揉まなくても、洗髪を行えます。
少量のヘアワックスで簡単に髪がまとめやすくなり、ヘアアレンジのバリエーションも増える点が最大のメリットです。万が一、症状にかかっても、対象箇所を上手にカットすれば薄毛部分をカバーできます。
クリニックや病院を受診
牽引性脱毛症かもしれないと感じたら、早期にクリニックや病院を受診して治療を進めましょう。診察で脱毛の原因を把握して、適切な治療を受けながらケアをすれば改善が見込めます。
何もせずに放置しておくと、脱毛の症状が進行しやすくなるため早めの対策が必要です。住んでいる地域に専門クリニックがない場合は、オンラインの診療サービスも利用できます。1人で悩まずに、早めに専門の医療機関を受診しましょう。
髪を強く引っ張らないように注意し、タイトなヘアスタイルやアクセサリーを避けてください。頭皮マッサージを行い、ストレスを軽減することも大切です。適切なヘアケア製品を使用し、栄養バランスの取れた食事を心がけ、健康的な生活を送るよう心掛けましょう。
牽引性脱毛症のよくある質問
牽引性脱毛症に関してよくある質問について解説します。
自身の悩みに近いものがあれば、ぜひ確認してみてください。
男性でも牽引性脱毛症になりますか?
ロングヘアの女性がなりやすいイメージがありますが、実は長い髪をしている男性でもかかります。男性でも、ロングヘアだったり髪を結んでいたりすると、髪が抜け落ちる可能性があるので注意が必要です。
男性の場合も、症状が見られたらクリニックを受診して治療を進めます。加齢や生活習慣による脱毛症とは異なるため、人によっては育毛剤や内服薬を使用しない治療も受ける場合があります。
脱毛症に対してどんな治療をするか、医師に確認して無理のない範囲で治療を進めていきましょう。
高校生でも牽引性脱毛症になりますか?
年齢や性別は関係ありません。ロングヘアであれば、中学生や高校生でも発症します。
髪を引っ張る髪型をしたり、毎日同じヘアスタイルにしてたりするのが原因となりがちです。
髪に切れ毛や枝毛が増えて、髪のボリュームが減っている感覚があると、すでに牽引性脱毛症になっている可能性があります。不安があれば、クリニックや病院に行って髪の状態を診察してもらいましょう。
牽引性脱毛症はいつ治りますか?
治まる時期については、個人差があるので一概には言えません。治療の頻度や普段のヘアケア、そして頭皮や髪質などによっても治まる時期は異なります。たとえ治療に時間がかかっても、焦らずに進めていく姿勢が大切です。
脱毛症の治療がうまく進まずに、悩む時期もあるかもしれません。思うように進まないときは、専門家にアドバイスをもらいながらじっくりと症状を改善する必要があります。髪を労わりながら、慌てず脱毛症の治療を進めていきましょう。
ヘアアレンジをやめたくないですが牽引性脱毛症は予防できますか?
ヘアアレンジをやめなくても、牽引性脱毛症の予防はできるので心配はいりません。ヘアアレンジをする頻度を減らして、髪を休ませる時間を作ったり頭皮マッサージをしたりすれば、脱毛対策につながります。
ときには思い切ってショートカットにしてみると、髪への負担の少ないヘアアレンジもできるようになります。髪と頭皮を労わりながら、ヘアアレンジの趣向を変えてみることによって、牽引性脱毛症になるリスクを減らせます。
牽引性脱毛症になりにくいヘアスタイルについて、美容室でアドバイスをもらうのもよいでしょう。
牽引性脱毛症を治したいならクリニック受診がおすすめ!
牽引性脱毛症になって悩んでいる方は、クリニックで治療を受けましょう。クリニックに行けば、周囲には話しにくい髪の悩みや脱毛症についての相談が可能です。医師や専門家から、脱毛を防ぐためのアドバイスが受けられる場合もあります。
薄毛治療のクリニックは男性向けのイメージが強いですが、女性が受診できるクリニックもあります。また、近くに薄毛治療のクリニックが無くても、髪の専門家にオンライン相談ができるサービスもあるため、興味があれば活用してみましょう。
まとめ
牽引性脱毛症は、ヘアアレンジを頻繁にしていると起こりやすくなる脱毛症です。年齢や性別を問わず、長い髪を同じ分け目にしていたり結んでいたりするとかかりやすくなります。ほかにも、ヘアアイロンやエクステ、ブラッシングで髪を引っ張る行為も原因です。
しかし、髪が抜け落ちるのを恐れてヘアアレンジをやめる必要はありません。頻度を減らして、髪を適切にケアをしていれば脱毛症は予防できます。できるだけ髪を痛めつけないように、優しく丁寧にブラッシングをしたり頭皮をほぐしたりすることも大切です。
もし不安があれば、髪の専門家に相談をしてみましょう。現在の髪の悩みや脱毛の対策についてアドバイスがもらえる可能性があります。
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